カヌーツアーをやっているとよく聞かれる質問で、
「カヌーとカヤックの違いって何ですか?」
というのがある。実際カヌーの本を見ても、詳しい人に聞いても意外とあいまい。
カヌーはシングルパドルで、カヤックはダブルパドル。中に入り込むのがカヤックで・・・。
と答えられていることがしばしば。
ということでこの違いをハッキリさせておこう。
まずはカヌー。
カヌーはコロンブスによって西洋に伝えられた言葉。
大航海時代、西インド諸島に上陸した際に先住民族が乗っていた小船「カノー」をそのまま報告したのが始まり。そしてアメリカ大陸、そして太平洋と進出した西洋人はモンゴロイドであり先住民の乗っていた丸木舟を全てカヌーと呼ぶようになりました。その大きさは1人乗りの丸木舟から数十人乗れる船や帆を立てた双胴船まで多種にわたります。
そしてカヤック。
広辞苑などによるとエスキモーが狩りに使っていた小船と書かれており、その構造は木の枠にアザラシの皮を張り、漕ぎ手の腰あたりを皮ひもで閉めて浸水を防ぐ。とも書いてあります。それらをカイアックと呼んでおりそれがカヤックになったと考えられています。ただ歴史にはなかなか登場しなかったようです。カヤック民族は文字を持たなかったのです。ただ考古学上では2000年前ほどのものが見つかっているようです。
カヤックは極北の民族が使っていたモノで丸木舟になる大木がなかった場所で生まれためこのような工夫がなされたのかもしれません。ベーリング海やアリューシャン列島にはカヤック文化があり、その南にカヌー文化が太平洋一体にあるようなイメージでしょうか。カヤック文化も北の海に対応できるようカヌーから進化したものかもしれません。
いずれにしても先住民にとって貴重な食料を調達するための道具であり、さらなる新天地を求め太平洋の島々に人類が拡散した歴史を持つ乗り物であることは間違いないのです。
世界最古の丸木舟を作るための石斧が出土したのが鹿児島県の栫ノ原遺跡と言われています。
なんと縄文時代の話。さらにコロンブスが西洋にカヌーという言葉を伝える800年ほど前にカヌーを記載したと思われる文献がありました。それが古事記と日本書紀、日本最古の文献です。古事記では「枯野」という名前の舟が、そして日本書紀では「軽野」という名前で出てきています。舟の名前として当て字で使用されていると考えられています。カノーです。
日本人もカヌー民族だった証拠なのでしょう。
現在、これらの漢字が使用されている地名は全国各地にあるようですが、もしかすると舟を作る工房みたいな場所だったのかもしれません。
どうも現代人は島国で周りが『海』、高い山や森が多く『いい川』があること忘れているような・・・。
カヌー民族であったはずの日本人なのに。
もっと日常的に楽しむべきだと思う。こんな歴史をふまえた視点でカヌーを楽しむのも良いのだ。
実際長距離を漕いでみると、感覚としてこの距離感なら韓国や台湾に渡れるな。とか思ってしまうのです。
ただ、これらの研究はまだこれからなので今後また発見があるかもしれません。
なぜこれからなのかと言うと理由は2つ。
アウトドア文化が出来たこと。
1970年代になり北米で始まったアウトドア文化。当時で言うバックパッキングです。
実際大きなアウトドアメーカーが誕生したのも70年代が多く。調べてみると。
1971年マウンテンスミス、1974年オスプレイ、1975年モンベル・ディナデザイン、1976年タラスブルバ、1977年グレゴリー (間違ってたらゴメンナサイ)
それが、80年代90年代と発展し、そこから始まりレジャーとしてカヌーを楽しむことも一般的になりました。
そしてもう一つは、カヌールネッサンス。
1970年代からハワイを中心に南太平洋の島々で始まった太平洋の島々に人が住み始めたのはいつからか?どうやってきたのか?という人類の謎に取り組んだ文化復興運動です。1976年に双胴船カヌー「ホクレア号」は祖先と同じ航海術でハワイからタヒチへの航海に成功。それ以来各地でカヌーが復元され航海が行われました。
この2つの要素の繋がりが現在のカヌーという乗り物に対して歴史的に見るきっかけになったと言えるのでしょう。
ってな理由で、トリップではこの舟のことをカヤックではなく「カヌー」という言葉で統一しており、
これらの歴史をふまえてこれからの時代『カヌーを日常化』させたい考えています。
日本人なのだから。
なので、カヌーとカヤックの違いは何ですか?と聞かれたら。
『話長くなりますよ~』と答えるようにしている。
ほら、長くなった・・・。